相続登記の必要書類|何のために求められるのかから整理する
相続登記の必要書類を一覧で眺めると、量の多さに気持ちが折れそうになります。
ただ、これらの書類は1通ずつ、登記官に何かを証明するためにあります。何を証明するための書類なのかが分かると、ご自分の場合にどれが要って、どれが要らないのかを、ご自身で判断できるようになります。
手続き全体の流れは相続登記とはに書きました。ここでは書類だけを掘り下げます。
登記官は、何を確かめるのか
相続登記の審査で確かめられるのは、突き詰めると次の3つです。
- 登記簿の名義人が亡くなったこと。そして、登記簿に記録された名義人と、亡くなったその方が同一人物であること
- 誰が相続人で、そのうち誰が不動産を取得するのか
- 新しく名義人になる方の氏名と住所が正確であること
これに、登録免許税を計算するための不動産の評価額が加わります。必要書類は、この4つのどれかに対応しています。
法律の側から見ると、こうなっています。
不動産登記法 第61条(登記原因証明情報の提供)
権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。
登記原因とは、権利が動いた理由のことです。相続登記なら「相続」が原因で、それを証する情報の中身は、不動産登記令の別表が定めています。
不動産登記令 別表の22の項(相続による権利の移転の登記・添付情報欄)
相続又は法人の合併を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)及びその他の登記原因を証する情報
回りくどい書き方ですが、「公務員が職務上作成した情報」の代表が戸籍です。そして遺産分割協議書は「その他の登記原因を証する情報」にあたります。戸籍で相続人の範囲を示し、協議書で誰が取得したかを示す、という組み立てです。
どの形で登記するかで、必要書類が変わります
相続登記には、遺産分割協議による場合、遺言による場合、法定相続分どおりの場合の3つの形があります。どの形かで、そろえる書類が大きく変わります。
どの形でも共通するもの
| 書類 | どこで取るか | 何のため |
|---|---|---|
| 被相続人の死亡が分かる戸籍 | 本籍地の市区町村 | 相続が開始したことを示す |
| 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票) | 最後の住所地(附票は本籍地) | 登記簿の名義人と同一人物だと示す |
| 不動産を取得する方の住民票 | 住所地の市区町村 | 新しい名義の住所を正確に記録する |
| 固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村 | 登録免許税を計算する |
住民票の除票が要るのは、戸籍と登記簿がつながらないからです。戸籍には住所が載らず、登記簿には本籍が載りません。両方が載る除票(または附票)を挟んで、「登記簿のこの住所のこの方が、戸籍のこの方だ」とつなぎます。
評価証明書は申請する年度のものが要ります。税額の計算方法とあわせて相続登記の登録免許税に書きました。
遺産分割協議による場合に加わるもの
| 書類 | どこで取るか |
|---|---|
| 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍 | 本籍地の市区町村 |
| 相続人全員の現在の戸籍 | 各自の本籍地 |
| 遺産分割協議書 | 相続人が作成 |
| 相続人全員の印鑑登録証明書 | 各自の住所地 |
出生までさかのぼるのは、相続人が他にいないことを示すためです。どこまで集めるかは相続人の顔ぶれで変わります(相続人が誰かで、集める戸籍はここまで変わる)。取り方そのものは戸籍の種類と取り方をご覧ください。
協議書の書き方と、押印・印鑑証明書の扱いは遺産分割協議書の書き方に書きました。協議書に添える印鑑証明書には、相続登記では発行から3か月以内という制限がかかりません。
遺言による場合
この形がもっとも軽くなります。 遺言で不動産の行き先が決まっていれば、相続人全員を確定する必要がないからです。
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 遺言書 | 公正証書遺言、法務局保管の自筆証書遺言(遺言書情報証明書)、または検認を受けた自筆証書遺言 |
| 被相続人の死亡が分かる戸籍 | 出生までさかのぼる必要はありません |
| 取得する方が相続人だと分かる戸籍 | その方の現在の戸籍。被相続人の子、配偶者といった関係が分かるもの |
他の相続人の戸籍も、印鑑証明書も要りません。検認の手続きは相続登記とはの遺言の節をご覧ください。
法定相続分どおりの場合
協議書と印鑑証明書は要りませんが、相続人全員の戸籍一式はそろえます。全員の持分を登記するためです。ただし、共有での登記は後の処分がしにくくなるため、選ぶ前に相続登記とはで触れた注意点をご覧ください。
原本は返してもらえます
戸籍の束や協議書は、法務局に取られてしまうわけではありません。原本還付という手続きがあり、不動産登記規則55条が定めています。
やり方は、返してほしい書類のコピーを作り、「原本と相違ない」旨を記載して記名し、原本と一緒に提出するだけです。登記が終わると原本が返され、そのまま金融機関の相続手続きなどに使い回せます。
ただし、その申請のためだけに作った書面(司法書士への委任状など)は返してもらえません(規則55条1項ただし書)。
戸籍については、相続関係説明図(相続関係を一枚にまとめた家系図のような書面)を添付すると、コピーを付けずに原本還付を受けられる取扱いがあります。戸籍は通数が多いので、コピーの手間がだいぶ変わります。
なお、戸籍の束の代わりに法定相続情報一覧図の写しを提出する方法もあります。無料で必要通数を交付してもらえて、他の相続手続きにも並行して使えます(法定相続情報一覧図とは)。
書類の「期限」はあるか
有効期限を気にされる方が多いので、まとめておきます。
- 戸籍・除票・住民票 … 発行からの期限はありません。以前に取ったものが使えます。ただし相続人の現在の戸籍は、被相続人が亡くなった日より後に発行されたものを求められます。亡くなった時点で相続人が生存していたことを示すためです
- 印鑑登録証明書 … 相続登記では期限の制限がかかりません
- 固定資産評価証明書 … 期限ではなく年度です。申請する年度のものを使います
「前に取った戸籍があるが、使えるか」というご質問には、おおむね「使えます」とお答えできることになります。
そろえる順番
書類集めは、次の順番で進めると無駄がありません。
- 遺言があるかを確かめる。あるかないかで、集める戸籍の量が大きく変わります
- 名寄帳と登記事項証明書で、対象の不動産といまの名義を確かめる。名義がすでに先代のままなら、集める範囲が変わります
- 戸籍を集め、評価証明書・住民票をそろえる
集め終えたら、申請書の作成に進みます。書き方は相続登記の申請書の書き方にまとめました。記載例をそのまま載せていますので、あわせてご覧ください。
途中で戸籍が読めない、どこまで集めるべきか分からない、となったらご相談ください。途中まで集めた書類は無駄になりません。 不足分だけをこちらで集めて、続きからお引き受けできます。
相続登記について詳しく/費用は料金のご案内をご覧ください。
根拠・参考
条文は e-Gov 法令検索で現行のものを確認しています(最終確認 2026年7月30日)。