相続登記とは|そもそも登記とは何か、義務になる前は何のためにしたのか
「相続登記が義務化されました」
そう言われても、ピンとこないのではないでしょうか。
義務になったことは分かった。ただ、そもそも登記とは何なのか。名義を変えると、何がどう変わるのか。 そこが分からないまま「義務ですから」と言われても、腑に落ちません。
ここでは不動産の登記という制度そのものから始めて、相続登記が何のための手続きなのか、義務になる前は何のためにしていたのか、実際に申請するまでに何をするのかを順に見ていきます。
期限や過料といった義務化そのものの中身は、相続登記の義務化とはにまとめています。
そもそも「登記」とは何のための制度か
不動産登記法は、冒頭の第1条で、自分が何のための法律かを述べています。
不動産登記法 第1条(目的)
この法律は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより、国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。
短い条文ですが、この中に制度の骨格が入っています。
公示する … どこにあるどんな不動産で、誰の持ち物で、どんな権利がついているのかを、誰でも見られる形にしておくことです。
国民の権利の保全を図る … 見られる形にしておくことで、その人の権利を守ります。
取引の安全と円滑に資する … 買おうとする人が、事前に持ち主と権利関係を確かめられます。
土地や建物には、財布や車のような「持っている」という外形がありません。鍵を持っている人が持ち主とは限らず、住んでいる人が持ち主とも限りません。 目に見えない権利を、目に見える形にしておく。それが登記です。
登記簿は、手数料を払えば誰でも取り寄せられます。持ち主でなくても、その不動産と縁がなくても取れます。他人の家の権利関係が誰にでも見えてしまうことに、驚かれる方もいます。しかしこれは制度の抜け穴ではなく、目的そのものです。誰でも確かめられるからこそ、安心して取引ができます。
「登記簿」の正式な名称は「登記事項証明書」
ひとつ、言葉を整理しておきます。
ふだん「登記簿」と呼んでいるあの書面は、正式には「登記事項証明書」といいます。
不動産登記法 第119条第1項(登記事項証明書の交付等)
何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができる。
「何人も」 とあるのが、先ほどの公示という考え方です。誰でも請求できます。
かつては、法務局にある紙の記録を写した登記簿謄本という書面でした。記録がデータに移ったのに合わせて、「写し」ではなく「記録された事項を証明した書面」という組み立てに変わり、名前も登記事項証明書になっています。呼び名が3つあるように見えますが、いま取り寄せれば出てくるものは同じです。
窓口で「登記簿をください」「謄本をください」と言えば通じます。 金融機関や役所から「登記簿謄本を出してください」と求められたときも、取るのは登記事項証明書で構いません。
この記事でも、読みやすさを優先して「登記簿」と書く場面があります。実際に取り寄せる書面は登記事項証明書だとお考えください。
登記簿には、何が書いてあるか
登記の記録は、大きく2つの部分に分かれています(不動産登記法12条)。
不動産登記法 第2条第7号・第8号(定義・抜粋)
七 表題部 登記記録のうち、表示に関する登記が記録される部分をいう。
八 権利部 登記記録のうち、権利に関する登記が記録される部分をいう。
権利部はさらに甲区と乙区に分かれます。整理すると、次のようになります。
| 区分 | 記録されていること |
|---|---|
| 表題部 | どこにある、どういう不動産か(土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・家屋番号・構造・床面積) |
| 権利部 甲区 | 所有権に関すること(所有者は誰か、いつどんな理由で取得したか、差押えや仮登記の有無) |
| 権利部 乙区 | 所有権以外の権利(抵当権、根抵当権、地上権、賃借権など) |
相続登記で書き換えるのは、権利部の甲区です。 亡くなった方の氏名と住所が記録されているところに、引き継いだ方の氏名と住所を記録します。
ご自宅の登記事項証明書をご覧になったことがない方は、一度取り寄せてみてください。手続きの話は、いまの記録を見てからのほうが早く進みます。
| 請求のしかた | 登記事項証明書の手数料(1通) |
|---|---|
| 窓口・郵送(書面で請求) | 600円 |
| オンラインで請求し、郵送で受け取る | 520円 |
| オンラインで請求し、窓口で受け取る | 490円 |
2025年4月1日からの金額です。なお、119条5項が他の管轄の登記所に対しても請求できると定めているので、遠方の不動産でも、お近くの法務局の窓口で取れます。
登記をすると、何が変わるのか
ここが登記という制度の中心です。民法を見ます。
民法 第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
「対抗することができない」 という言い方が、この条文の要です。主張を通すことができない、という意味です。
売買で考えると分かりやすくなります。ある土地の持ち主が、その土地をひとりに売り、続いて同じ土地を別のひとりにも売ってしまったとします。契約はどちらも有効に成立しています。では、土地はどちらのものになるのか。
先に登記をしたほうです。 契約の順番ではありません。先に契約した側であっても、あとから契約した側に先に登記を済まされてしまえば、その相手に対して「自分のものだ」と主張できません。
つまり登記とは、持ち主を決める制度ではなく、持ち主だと主張できるようにしておくための制度です。権利そのものは契約や相続によってすでに動いていて、登記はそれを外に対して通せるようにする備えにあたります。
登記さえあれば安全、という制度でもありません
登記には公信力がないと説明されます。登記の記録を信じて取引をした人が、それだけで保護されるわけではない、ということです。
たとえば、登記簿にある方が所有者として記録されていても、その登記が何らかの理由で誤っていた場合、その方から買った人が当然に所有権を得られるとは限りません。権利を主張できるようにする力(対抗力)と、記録を信じた人を守る力(公信力)とは、別のものだということです。
登記は、争いになったときに自分の権利を通すための備えです。 何があっても安全を保証してくれる仕組みではありません。だからこそ、不動産の取引では登記簿を見るだけで済ませず、権利証や本人確認まで含めて確かめることになります。
相続登記とは、何をする手続きか
ここまでを踏まえて、相続登記に入ります。
相続では、亡くなった時点で権利が動いています。
民法 第896条(相続の一般的効力)
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
登記をしなくても、所有権はすでに相続人へ移っています。 相続登記は、所有者になるための手続きではありません。すでに移っている権利を、登記簿の記録に反映させる手続きです。
そのため、売買の登記とは申請のしかたも違います。
不動産登記法 第60条(共同申請)/第63条第2項
第六十条 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
第六十三条第2項 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
売買であれば、売った人と買った人が共同で申請します。ところが相続では、名義人である被相続人はすでに亡くなっていて、共同申請の相手方がいません。そこで引き継いだ側が単独で申請できることになっています。
この単独申請という仕組みは、後で触れる「自分で申請できるか」という話にも関わってきます。相手方の協力を取り付ける必要がない、という点で、売買の登記より手続きの見通しは立てやすくなります。
なお、2024年4月1日からは、この申請が義務になりました(不動産登記法76条の2)。知った日から3年以内という期限が定められ、義務化より前に起きた相続については2027年3月31日が期限とされています。詳しくは相続登記の義務化とはをご覧ください。
義務になる前は、何のためにしていたのか
ここからが本題かもしれません。義務ではなかった時代も、相続登記をする理由はありました。
義務化の議論では、「登記されないから所有者不明の土地が増える」という社会の側の事情が語られます(詳しくは所有者不明土地とはをご覧ください)。しかしそれとは別に、登記をしないでいると、その方自身が困る場面があります。順に見ていきます。
法定相続分を超える部分は、登記しないと守られません
民法 第899条の2第1項(共同相続における権利の承継の対抗要件)
相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
読みどころは 「相続分を超える部分については」 です。
ご兄弟2人が相続人で、遺産分割の話し合いによって、お兄さんが実家をすべて取得することにまとまったとします。法定相続分は2分の1ずつですから、お兄さんは自分の相続分を超える2分の1を、話し合いによって得たことになります。
このとき、登記をしないでいるあいだに、弟さんにお金を貸していた債権者が、弟さんの法定相続分である2分の1を差し押さえたとします。
お兄さんは「話し合いで全部もらった」と言えるでしょうか。 条文のとおり、法定相続分を超える2分の1については、登記がなければその債権者に主張できません。遺産分割協議書があっても同じです。協議は相続人のあいだの取り決めであって、外の第三者に対しては、登記が備わってはじめて通ります。
同じことは、他の相続人がご自身の持分を第三者に売ってしまった場合にも起こります。
この危うさは、2019年に一段上がっていました
この899条の2は、2018年の相続法改正(平成30年法律第72号)で新しく設けられ、2019年7月1日から施行されています。
改正前は、扱いが違いました。法務省は改正の趣旨を、次のように説明しています。
特定財産承継遺言等により承継された財産については、登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができるとされている現行法の規律を見直し、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないことにする。
「現行法」とあるのは改正前の民法のことです。特定財産承継遺言とは、「この土地は長男に相続させる」というように、特定の財産を特定の相続人に引き継がせる遺言のことをいいます。
つまり改正前は、この形の遺言で不動産を引き継いだ場合、登記がなくても第三者に主張できるとされていました。 それが改められ、遺言によるか遺産分割によるかを問わず、法定相続分を超える部分は登記が要ることになりました。
遺言があるから安心、とは言えなくなったということです。 相続登記の義務化は2024年ですが、登記をしないでいることの危うさは、その5年前に一段上がっていたことになります。
売ることも、担保に入れることもできません
名義が亡くなった方のままでは、その不動産を売却できません。買主が登記を受けられないからです。金融機関から融資を受けて抵当権を設定することもできません。
相続登記が必要になるのは、何かをしたくなったときです。 家を売って施設の費用にあてたい、建て替えたい、そういう場面で初めて名義に気づかれる方がいます。そこから戸籍を集め始めると、売買の話を進められる状態になるまでに数か月かかることがあります。動きたいときに動けない、というのがこの問題の実際の姿です。
時間が経つほど、手続きが重くなります
ご相談をうかがっていて、重く感じるのがここです。
相続人が誰なのかは、亡くなった時点で決まります。ところが登記をしないまま置いておくと、その相続人がやがて亡くなり、その方の相続人が加わります。 3人だった相続人が、次の代で10人、さらに次の代で20人といった数になることもあります。
増えるのは人数だけではありません。
- 集める戸籍が増えます。 亡くなった方それぞれについて、出生から死亡までをたどることになります
- 面識のない方に連絡を取ることになります。 遺産分割の話し合いは相続人全員でまとめる必要があります
- 所在の分からない方が出てきます。 住民票をたどっても届かない場合、家庭裁判所の手続きが要ることもあります
相続人が誰になるかによって、集める戸籍の範囲も変わります。 お子さまが相続人であれば亡くなった方の戸籍をたどれば足りますが、ご兄弟が相続人になる場合は、ご両親それぞれについても出生から死亡までをたどることになります。世代が重なると、この作業がその都度増えていきます。類型ごとの整理は相続人が誰かで、集める戸籍はここまで変わるにまとめました。
費用も同じように増えます。 戸籍の通数が増え、書類の郵送先が増え、司法書士にご依頼いただく場合の報酬も、相続人の人数に応じて加算されるのが通例です(当事務所の考え方は料金のご案内に載せています)。
つまり相続登記は、先に延ばすほど高くなる手続きです。義務化されたから面倒になったのではなく、もともと早いほうが軽い手続きでした。
相続登記の流れ
ここからは、実際に申請するまでに何をするのかを順に見ていきます。ご自身で進める方にも使えるように書きます。
1 遺言があるかどうかを確かめる
何よりも先に確かめていただきたいのが、遺言の有無です。 あるかないかで、この後の作業量が変わるからです。
遺言で不動産の行き先が決まっていれば、遺産分割の話し合いが要りません。話し合いが要らないということは、相続人の全員を確定させる必要がないということです。
遺産分割で登記する場合、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべてそろえて、相続人がほかにいないことを示します。ところが遺言による登記であれば、亡くなったことが分かる戸籍と、不動産を取得する方が相続人だと分かる戸籍で足ります。集める通数が大きく変わります。
戸籍を集め始めてから遺言が出てくると、その手間の一部が使われないまま残ります。 順番を逆にしないでください。
公正証書遺言 … 全国の公証役場をつなぐ検索の仕組みがあります。最寄りの公証役場で照会でき、申出は無料です。 亡くなった事実が分かる除籍謄本、相続人であることが分かる戸籍謄本、ご自身の顔写真付きの公的な身分証明書(実印と印鑑登録証明書でも構いません)を持参します。
ただし、この検索でたどれるのは1989年(平成元年)以降に作成された遺言です。 それより前のものは、保管している公証役場に直接あたることになります。
法務局に預けられた自筆証書遺言 … 遺言書保管所に「遺言書保管事実証明書」を請求すると、預けられているかどうかが分かります。預けられていた場合は、続けて「遺言書情報証明書」を請求します。この証明書があれば検認は要りません。
手元から出てきた自筆証書遺言 … 家庭裁判所の検認を受けます。
民法 第1004条(遺言書の検認)
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
封がされた遺言書は、その場で開けないでください。 条文が家庭裁判所での開封を定めています。開けてしまっても遺言が無効になるわけではありませんが、他の相続人との関係で疑いを招きます。見つけた状態のまま家庭裁判所へ持っていくのが確実です。
検認は、申立てをしてから期日が指定されるまでに日数がかかります。この点でも、早く分かるほうが助かります。
なお、遺言があっても戸籍集めが軽くならない場合があります。 遺言が一部の財産にしか触れていないときは、残りについて遺産分割の話し合いが要り、結局は相続人の全員を確定することになります。遺言を見つけたら、そこに書かれていない財産がないかまで確かめてください。
また、遺言のとおりに登記はできますが、それで相続人のあいだの話が終わるとは限りません。取り分が法律上の最低限を下回る相続人からは、遺留分の請求を受けることがあります。
2 どの不動産があるかを洗い出す
次にするのは、対象となる不動産の把握です。手がかりは3つあります。
固定資産税の納税通知書 … 毎年春に市区町村から届きます。課税されている不動産が載っています。
名寄帳 … その市区町村内で、その方の名義になっている不動産をまとめた帳簿です。市区町村の窓口で相続人が請求できます。
権利証・登記識別情報通知 … 取得したときに交付された書類です。
納税通知書だけで済ませないでください。 私道の持分、集会所の共有持分、公衆用道路など、固定資産税がかからない不動産は納税通知書に載らないことがあります。 見落としたまま登記を済ませると、後日その分だけやり直すことになります。名寄帳を取って突き合わせてください。
不動産の所在地が複数の市区町村にまたがる場合は、それぞれの市区町村で名寄帳を取ります。
3 いまの名義を登記事項証明書で確かめる
洗い出した不動産について、登記事項証明書を取り、権利部の甲区を見ます。
ここですでに祖父母の名義だったと分かることがあります。その場合は、そこから現在までの相続をすべてたどることになり、集める戸籍も、話し合いに加わる方の人数も大きく変わります。早い段階で分かったほうが、段取りを組み直せます。
4 相続人を確定する
遺言がない場合、あるいは遺言が一部の財産にしか触れていない場合は、ここで相続人を確定します。
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべてそろえ、相続人が誰なのかを確定します。あわせて、相続人それぞれの現在の戸籍も要ります。
集めるのは現在の戸籍だけではありません。婚姻や転籍で戸籍が新しく作られていれば、その前の除籍が要りますし、法改正で作り替えられていれば改製原戸籍も要ります。戸籍は、その人の一生分が1通に収まっているものではないという点が、最初につまずくところです。
種類の違いと、窓口・郵送での頼み方、2024年に始まった広域交付で何ができて何ができないかは、相続手続きで集める戸籍の種類と取り方にまとめました。ご自分で集める場合は、そちらをご覧ください。
戸籍がそろったら、法定相続情報一覧図の交付を受けておくと後が楽になります。法務局が戸籍の束を確認し、相続関係を1枚にまとめた図に認証文を付けて交付してくれる制度です。手数料はかからず、必要な通数を出してもらえます。 登記だけでなく、金融機関の手続きや相続税の申告にも使えるので、戸籍の原本を何度もやり取りする手間が減ります。
5 誰がどの不動産を取得するかを決める
決め方は3つです。
遺言による … 遺言の内容にしたがって登記します。
遺産分割の話し合いによる … 相続人全員で協議し、遺産分割協議書を作ります。
民法 第907条第1項(遺産の分割の協議)
共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
法定相続分のまま登記する … 話し合いがまとまらない場合、法定相続分に応じた共有として登記することもできます。相続人の一人から単独で申請できます。
ただし、この3つ目は勧められる場面が限られます。共有にすると、売るにも建て替えるにも共有者全員の同意が要ります。 次の相続でさらに共有者が増えれば、身動きが取りにくくなります。話し合いがまとまらないまま期限が迫っているという事情であれば、共有で登記するより相続人申告登記で義務を果たしておくほうが、後の選択肢を狭めずに済むと考えています。
6 添付書類をそろえる
遺産分割の話し合いによって登記する場合、一般的に必要になる書類です。
| 書類 | どこで取るか |
|---|---|
| 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む) | 本籍地の市区町村 |
| 亡くなった方の住民票の除票(または戸籍の附票) | 最後の住所地の市区町村(附票は本籍地) |
| 相続人全員の現在の戸籍 | 本籍地の市区町村 |
| 不動産を取得する方の住民票 | 住所地の市区町村 |
| 遺産分割協議書(相続人全員が署名し、実印で押印) | 自分で作成 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 住所地の市区町村 |
| 固定資産評価証明書 | 不動産の所在地の市区町村 |
固定資産評価証明書は、登録免許税を計算するために使います。課税される年度のものが要りますので、年度をまたぐときはご注意ください。
遺言によって登記する場合は、この表よりも軽くなります。 遺言書のほかは、亡くなったことが分かる戸籍、不動産を取得する方が相続人だと分かる戸籍と住民票、固定資産評価証明書です。出生までさかのぼる戸籍も、他の相続人の印鑑証明書も要りません。 1つめに遺言の確認を置いたのは、この差があるからです。
なお、遺産分割協議書に添える印鑑証明書は、相続登記では発行からの期間の制限がないとされています。売買の登記では3か月以内のものを求められますが、相続の場面では扱いが違います。以前に取ったものが手元にあれば使えることがあります。
ここで手が止まりやすいのが、登記簿上の住所と、住民票の除票の住所がつながらない場合です。何度か引っ越しをされていると、除票だけでは登記名義人と同一人物であることを示せません。戸籍の附票をさかのぼって住所の履歴をつなぐのが基本の対応になりますが、保存期間の関係で取れないこともあります。その場合に何を求められるかは法務局によって違うため、事前に管轄の法務局へ確認してから動くほうが確実です。
7 申請書を作り、法務局へ出す
申請先は、不動産の所在地を管轄する法務局です。
不動産登記法 第6条第1項(登記所)
登記の事務は、不動産の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所(以下単に「登記所」という。)がつかさどる。
住んでいる場所ではなく、不動産のある場所である点にご注意ください。管轄が違う不動産が複数あれば、その数だけ申請します。当事務所の対応地域のページに、地域ごとの管轄法務局を載せています。
申請の方法は、窓口・郵送・オンラインの3つです(不動産登記法18条)。
申請書の様式と記載例は、法務局が公開しています。法定相続、遺産分割、数次相続、公正証書遺言、自筆証書遺言といった場合分けごとに用意されているので、ご自身で申請される方は、当てはまる様式を選んで写していくのが早道です。
登録免許税は、固定資産税評価額に0.4%(1000分の4)を掛けた額です。評価額が1,000万円の不動産なら4万円になります。収入印紙を申請書に貼って納めます。
登録免許税がかからない場合があります
租税特別措置法84条の2の2に、相続登記についての免税措置が置かれています。2027年3月31日までの登記が対象です。
① 相続した方が、登記をしないまま亡くなった場合(同条1項)
祖父から父へ、父から子へと相続が続いたとき、いったん父の名義にする登記について登録免許税がかかりません。世代をまたいで放置されてきた土地の登記を促すための措置です。
② 不動産の価額が100万円以下の土地の場合(同条2項)
評価額が100万円以下の土地についての相続による所有権移転登記は、登録免許税がかかりません。私道の持分や山林などが該当することがあります。
いずれも土地についての措置で、建物は対象外です。また、申請書に根拠となる条文を記載しないと適用されませんので、様式の記載例を確認してください。
8 完了を確かめる
申請から完了までの日数は、法務局ごとに「登記完了予定日」として公表されています。
完了すると、登記完了証と登記識別情報通知が交付されます。登記識別情報は、以前の権利証にあたるもので、次にその不動産を売ったり担保に入れたりするときに使います。再発行はされません。 封をされた状態で交付されるので、開封せずに保管してください。
最後に、登記事項証明書を取って、記録が意図したとおりになっているか確かめてください。 氏名や住所の誤り、持分の割合の誤りは、この段階で見つけておくほうが直しやすくなります。
自分で申請できるか
ここは正直に書きます。
次のような場合は、ご自身で申請できることが多いと考えています。
- 相続が1回で済んでいる(名義人が亡くなった後、相続人の方は亡くなっていない)
- 相続人が配偶者とお子さまだけで、全員と連絡が取れていて、分け方に争いがない
- 不動産が1つか2つで、管轄も1か所
- 遺言がない、または公正証書遺言がある
法務局は様式と記載例を公開していますし、事前に相談の予約を受け付けている窓口もあります。平日に何度か足を運べる方であれば、費用を抑えられます。
一方、次のような場合は、途中で行き詰まりやすくなります。
- 名義がすでに祖父母の代のままになっている(相続が二重三重に重なります)
- 相続人に、連絡の取れない方や所在の分からない方がいる
- 相続人に、判断が難しい状態の方や未成年の方がいる(成年後見人や特別代理人の選任が要ります)
- 登記簿上の住所と住民票がつながらない
- 相続放棄をした方がいる(家庭裁判所の申述受理証明書などが要ります)
- 不動産の管轄が複数にまたがる
ご自身で始めて、途中で難しいと感じられた時点でご相談いただいて構いません。そこまでに集めた戸籍は無駄になりません。 そのまま使えます。「一度は自分でやろうとして止まってしまった」というご相談は珍しくありませんし、集めた書類がある分、話が早く進みます。
手をつける前に
まず確かめていただきたいのは、登記名義がいま誰になっているかです。
固定資産税の納税通知書があれば、そこから登記事項証明書を取り寄せて確認できます。名義が亡くなった方のままなら、期限がすでに動いています。
そのうえで、次の3つが分かれば、段取りが見えてきます。順番が大事です。
- 遺言があるか(公証役場と法務局に照会する)
- 不動産がいくつあるか(名寄帳で突き合わせる)
- 相続人が何人になるか(戸籍をたどる)
3つ目で手が止まってしまった、というご相談をよくお受けします。相続人が誰になるのか、戸籍をどこまで集めればよいのか、期限がいつなのか。ご相談の場で整理してお伝えします。何もお持ちでない状態からで構いません。
相続登記について詳しく/費用は料金のご案内をご覧ください。対応地域ごとに、申請先となる法務局もご案内しています。
根拠・参考
- 不動産登記法(e-Gov法令検索)
- 民法(e-Gov法令検索)
- 租税特別措置法(e-Gov法令検索)
- 法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」
- 法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」
- 法務省「登記手数料について」
- 法務局「不動産登記の申請書様式について」
- 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」
- 法務局「法定相続情報証明制度について」
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度」
- 日本公証人連合会「公正証書遺言が作成されているかどうかを調べることができますか」
- 国税庁「登録免許税の税額表」
条文は e-Gov 法令検索で現行のものを確認しています(最終確認 2026年7月28日)。