お早めに

相続登記は義務化されました。過去に亡くなられた方の相続分も、原則として2027年3月31日までに申請が必要です。

相続手続きで集める戸籍の種類と取り方|広域交付で何ができて、何ができないか

相続手続きで最初にぶつかる壁が、戸籍集めです。

「出生から死亡までの戸籍が必要です」と言われても、何をどう頼めばよいのか分かりません。窓口で「これで全部ですか」と聞いても、その市区町村にあるものしか出してもらえません。

ご自分で集めることは十分に可能です。 ただし、どこでつまずきやすいのかを知っておくと、無駄足がぐんと減ります。ここでは戸籍の種類から集め方まで、順に整理します。

なぜ、古い戸籍まで必要なのか

「亡くなったことが書いてある戸籍だけでは足りないのですか」。ご相談の場でよくいただく質問です。

足りません。手元にある最後の1通は、その方の一生を写したものではないからです。

戸籍は、婚姻や転籍(本籍地の移動)のたびに新しく作られ、法律が変わるたびに様式を改められてきました。そして新しく作られるとき、その時点で効力を失っている事項は、書き写されません。

たとえば、次のようなことが最後の戸籍からは読み取れなくなります。

  • すでに亡くなっているお子さまがいたこと
  • 前の婚姻と、そこで生まれたお子さま
  • 認知したお子さま
  • 養子縁組と、その離縁

いずれも、相続人が誰かを左右することがらです。最後の1通だけを見て進めると、相続人をお一人見落としたまま遺産分割協議をしてしまうことになります。

相続人の全員が加わっていない遺産分割協議は、無効です。やり直しになります。

だから、生まれたときまでさかのぼって、途切れなく確認する必要があります。戸籍を集めるのは、必要書類をそろえる作業ではありません。相続人が誰なのかを確定する作業です。

戸籍の3つの種類

① 戸籍謄本(全部事項証明書)

現在の戸籍です。その戸籍に入っている人全員が記載されています。

コンピュータ化された市区町村では「全部事項証明書」という名前になっています。呼び方が違うだけで、中身は同じものと考えて差し支えありません。

手数料は1通450円です。

② 除籍謄本

その戸籍にいた人が全員いなくなった戸籍です。

死亡、婚姻による転出、転籍(本籍地の移動)などで全員が抜けると、その戸籍は閉じられ、除籍となります。

手数料は1通750円です。

亡くなった方の戸籍は、除籍謄本になっているとは限りません

「父が亡くなったのだから、父の戸籍は除籍謄本のはずだ」。そう思われがちですが、そうとは限りません。

戸籍法 第12条第1項

一戸籍内の全員をその戸籍から除いたときは、その戸籍は、これを戸籍簿から除いて別につづり、除籍簿として、これを保存する。

条文が 「全員を」 と書いています。亡くなった方はその戸籍から除かれますが(同法23条)、同じ戸籍に配偶者の方が残っていれば、その戸籍は現在の戸籍のままです。取れるのは除籍謄本ではなく、戸籍謄本(全部事項証明書)になります。

筆頭者が亡くなっても、筆頭者は変わりません

もうひとつ、間違えやすいところです。

戸籍法 第9条

戸籍は、その筆頭に記載した者の氏名及び本籍でこれを表示する。その者が戸籍から除かれた後も、同様である。

「除かれた後も、同様である」と定められています。お父さまが筆頭者の戸籍は、お父さまが亡くなった後も、お父さまを筆頭者として表示され続けます。 残された配偶者の方が繰り上がって筆頭者になることはありません。

この9条は除籍にも準用されます(同法12条2項)。ですから、除籍になった後も、筆頭者は亡くなった方のままです。

戦前の戸籍では、筆頭者にあたるのが戸主です。こちらも同じで、戸主が亡くなっても、その戸籍・除籍の戸主の欄は亡くなった方のままです。

窓口で迷わないために。 戸籍を請求するときは、本籍と筆頭者(古い戸籍なら戸主)の氏名を書きます。ここに書くのは、亡くなった方の氏名です。「もう亡くなっているのに筆頭者でよいのか」と迷われますが、それで合っています。

③ 改製原戸籍(かいせいげんこせき/かいせいはらこせき)

法律の改正などで戸籍を作り替えたとき、作り替える前の古い戸籍です。

読み方が2つあります。字のとおりなら「かいせいげんこせき」ですが、実務では「原戸籍」を「はらこせき」と読み、「かいせいはらこせき」と呼びます。 話し言葉で「げんこせき」と言うと「現戸籍」と聞き分けがつかないため、と言われています。窓口ではどちらでも通じます。

相続で行き当たる改製は、4回です

戸籍は、明治から平成にかけて何度も作り替えられてきました。亡くなった方の戸籍を出生までたどっていくと、そのうち4回の改製に行き当たります。

改製のきっかけ改製原戸籍として出てくるもの
明治31年 旧民法の施行明治19年式
大正4年 戸籍法の改正明治31年式
昭和23年式へ 家制度の廃止大正4年式・明治31年式
平成6年式へ コンピュータ化昭和23年式

このほかに、明治19年式へ作り替える改製もありました。ただし、その元になった壬申戸籍(明治5年)は封印されていて交付されませんので、実際に手に取れる改製原戸籍は、上の4回から生じたものになります。

このうち、多くの相続で関わってくるのは昭和と平成の2回です。

昭和の改製 戦後の民法改正で家制度が廃止され、戸籍が「家」単位から「夫婦と未婚の子」単位に改められました。この作り替えの前の戸籍が、いわゆる昭和の改製原戸籍です。

平成の改製 戸籍のコンピュータ化に伴う作り替えです。実施時期は市区町村ごとに異なります。 同じ時期に全国一斉に行われたわけではないので、「いつ改製されたか」はその市区町村ごとに確認することになります。

手数料は1通750円です。

冒頭で述べた「書き写されない事項」が現れるのは、まさにこの改製原戸籍です。 相続で改製原戸籍まで求められるのは、そのためです。

手元の1通がどの様式なのかは、見た目でおおよその見当がつきます。横書きで印字されていれば平成6年式、縦書きで「筆頭者」とあれば昭和23年式、縦書きで「戸主」とあればそれより前です。

それぞれの改製が、いつ、何のために行われ、どう様式が変わったのかは、戸籍はなぜ何度も作り替えられたのかで詳しく扱っています。古い戸籍を読む必要がある場合は、あわせてご覧ください。

戸籍ができる前は、どうしていたのか

いまの戸籍の出発点は、明治4年(1871年)の戸籍法です。国立公文書館の解説は、この法律によってそれまで各府県ごとに行われていた戸籍作成の規則が全国的に統一されたとし、翌年に作られた全国の戸籍を壬申戸籍と呼んでいます。このとき戸籍区が設けられ、各区に戸長が置かれました。人を把握する仕事が、はっきりと国の仕事になった時点です。

では、それ以前はどうしていたのでしょうか。

江戸時代、その役目を担っていたのは寺でした。

幕府はキリシタンでないことを寺に証明させる仕組み(寺請制度)をとり、村や町ごとに、どの家の誰がどの寺の檀家なのかを書き上げた帳面を作らせました。これが宗門人別改帳(しゅうもんにんべつあらためちょう)です。信仰の調査である宗門改と、人の調査である人別改が、一つの帳面になったものと説明されます。

記されていたのは、名前、年齢、家族の構成といった事柄で、いまの戸籍に近い役割を果たしていました。奉公に出るとき、嫁ぐとき、旅に出るときには寺の証文が要ったとされます。役所ではなく寺が、人の所在を証明していたわけです。

明治の戸籍法は、この役割を国へ移すものでした。寺が担っていた仕事を、国が引き取ったと見ることができます。

ちなみに、壬申戸籍をもとに集計された当時の日本の総人口は3311万人でした(総務省統計局)。いま窓口で受け取る1通の戸籍は、150年あまり続いてきたこの仕組みの、現在の姿ということになります。

あわせて必要になることが多いもの

戸籍の附票 その戸籍にいるあいだの住所の履歴が記録されています。相続登記では、登記簿上の住所と最後の住所をつなぐために使うことがあります。

附票は戸籍と一緒につづられていますが、制度としては戸籍ではなく、住民基本台帳のものです。 そのため、後で述べる広域交付では取れません。本籍地の市区町村へ請求してください。 手数料が市区町村ごとに違うのも、同じ理由によります(戸籍の手数料は全国どこでも同じなのに、住民票はなぜ市区町村で違うのか)。

住民票の除票 亡くなったことで消除された住民票です。最後の住所を示すために使います。

どうやってさかのぼるか

手順はシンプルです。

  1. 死亡の記載がある戸籍を、亡くなった時点の本籍地で取る
  2. その戸籍に書かれている「従前戸籍」「改製前戸籍」などの記載を見る
  3. そこに書かれた本籍地・筆頭者で、一つ前の戸籍を請求する
  4. 出生の記載にたどり着くまで、2〜3を繰り返す

本籍地が変わっていれば、複数の市区町村にまたがります。 ここが手間のかかるところです。

窓口・郵送での頼み方のコツ

請求書の「必要な理由」欄や、窓口での説明で、次のように伝えてください。

相続手続きのため、この方の出生から死亡までの戸籍が必要です。そちらにあるものをすべてください。

こう伝えれば、その市区町村にあるものは、除籍も改製原戸籍もまとめて出してもらえることがほとんどです。一通ずつ指定する必要はありません。

郵送で請求する場合に必要なものは、おおむね次のとおりです。

  • 各市区町村の請求書(ウェブサイトからダウンロードできます)
  • 本人確認書類のコピー
  • 定額小為替(郵便局で購入します)
  • 返信用封筒と切手
  • 続柄が分かる戸籍のコピー(直系であることを示すため)

定額小為替は、多めに入れておくのが安全です。 何通必要になるか請求前には分からないため、足りないと再度やり取りが必要になります。余りは返却されます。

2024年に始まった「広域交付」

2024年3月から、本籍地でない市区町村の窓口でも、まとめて戸籍を取得できるようになりました。 本籍地が遠方にある方には、大きく負担が減る制度です。

ただし、使える範囲に制約があります。 ここを知らずに窓口へ行くと、二度手間になります。

使える人

請求できるのは、次の方に限られます。

  • ご本人
  • 配偶者
  • 父母・祖父母などの直系尊属
  • 子・孫などの直系卑属

ご兄弟の戸籍は、この制度では請求できません。

使えない場面

① 窓口へご自身で行く必要があります 郵送でも、代理人によっても請求できません。

② 本人確認は顔写真付きの身分証明書に限られます マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなどです。健康保険証だけでは受け付けてもらえません。

③ コンピュータ化されていない戸籍は対象外です 相続では古い戸籍までさかのぼるため、対象外のものが出てくることは珍しくありません。 その分は、従来どおり本籍地へ請求することになります。

④ 抄本(個人事項証明書)は請求できません 謄本(全部事項証明書)のみです。一部事項証明書も同じく請求できません。

⑤ 戸籍の附票は対象外です 広域交付は戸籍法にもとづく仕組みで、対象は戸籍の証明書に限られます。附票は住民基本台帳の制度なので、ここには入りません。相続登記で住所をつなぐために附票が要る場合は、本籍地へ請求することになります。

兄弟姉妹の相続では、使えません

ここが実務で効いてくる逆転です。

ご兄弟が相続人になる場合、必要な戸籍の量はもっとも多くなります。亡くなった方の出生から死亡までの全戸籍に加え、お子さまがいないこと、ご両親や祖父母が亡くなっていることまで、すべて戸籍で示す必要があるからです。

ところが、その立場の方こそ、広域交付を使えません。 もっとも大変な人がもっとも便利な制度を使えない、という形になっています。

この場合は、本籍地の市区町村へ一つずつ郵送で請求していくことになります。

つまずきやすいところ

ご自分で進める場合、次のような場面で止まりやすくなります。

転籍が多い 結婚や引っ越しのたびに本籍地を移していると、請求先が5か所、6か所と増えます。

古い戸籍が読めない 明治・大正期の戸籍は手書きの毛筆で、旧字体も使われています。そもそも文字が読めないことがあります。

そもそも戸籍が残っていない 古い戸籍が手に入らない理由は、2つあります。

① 保存期間が過ぎて廃棄されている 除籍簿には保存期間があります。平成22年の改正で150年に延ばされましたが、それより前の基準(80年)ですでに廃棄されたものは戻りません。 明治・大正期の戸籍では、これに当たることがあります。

② 戦災や災害で焼失している 空襲や火災、水害で、庁舎ごと失われた地域があります。名古屋も空襲の被害を受けた都市で、ご依頼をお受けしていると、市内でも戸籍が焼失していて取れない、という場面があります。

どちらの場合も、その戸籍を出せない旨の証明を市区町村に出してもらい、それで代えることになります。一般には「告知書」「廃棄済証明書」「焼失証明書」といった名前の書類を発行してもらえることがあります。

戸籍が一部そろわないことは、珍しくありません。 集まらないから手続きができない、というものではないので、ここで止まらないでください。

相続人が兄弟姉妹 前述のとおり、必要な戸籍がもっとも多く、広域交付も使えません。

相続が重なっている(数次相続) 手続きをしないうちに相続人がまた亡くなっていると、その方の分も出生から死亡まで必要になります。芋づる式に増えていきます。

ご自分で進めるか、任せるか

ご相続人が配偶者とお子さまだけで、本籍地の移動も少ない。 この場合は、ご自分で集めきれることが多いはずです。広域交付も使えますので、お近くの窓口で一度に取れる可能性があります。

一方、次のような場合は、時間と手間が一気に増えます。

  • 相続人がご兄弟や甥姪にあたる
  • 本籍地を何度も移している
  • 相続が重なっている
  • 相続人が海外にいる

ご自分で始めてみて、「思っていたより出てこない」と感じた時点でご相談いただいても構いません。 途中まで集めた戸籍は無駄になりません。続きからお引き受けできます。

当事務所にお任せいただく場合は、司法書士が職務上請求により収集しますので、窓口を回っていただく必要はありません。 ご兄弟の相続で広域交付が使えない場合も同じです。

行き詰まったら

まだ何も集めていない状態で構いません。 亡くなった方のお名前と、分かる範囲の本籍地があれば、そこから始められます。

どこまで集めればよいのかは、相続人が誰になるかで変わります。お子さまが相続人であれば、亡くなった方の戸籍をたどれば足ります。 ご兄弟が相続人になる場合は、ご両親それぞれについても出生から死亡までが要ります。類型ごとの整理は相続人が誰かで、集める戸籍はここまで変わるにまとめました。

対応地域のページでは、地域ごとに戸籍を取る窓口をご案内しています。あわせてご覧ください。

相続登記について詳しく/費用は料金のご案内をご覧ください。

相続登記の手続きとご依頼について →

根拠・参考

条文は e-Gov 法令検索で現行のものを確認しています(最終確認 2026年7月28日)。

代表司法書士 宮城 竜哉
この記事を書いた人 司法書士 宮城 竜哉(愛知県司法書士会所属 登録番号 愛知県第1842号)

平成25年の開業から13年、累計1,000件以上の相続手続きの依頼を受けてきました。

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