法定相続情報一覧図とは|戸籍の束を1枚にする、手数料のいらない制度
戸籍を集めきったあとに待っているのが、その束を持って役所や銀行を回る作業です。
法務局へ出し、金融機関へ出し、返ってきたらまた次へ。1か所ずつ順番に回ると、それだけで何週間もかかります。
この束を、認証の付いた1枚に置き換えられる制度があります。 法定相続情報証明制度といい、交付を受ける書面が法定相続情報一覧図の写しです。
手数料はかかりません。必要な通数を出してもらえます。 ご自分で手続きを進める方には、知っておいて損のない制度です。
戸籍の集め方は相続手続きで集める戸籍の種類と取り方をご覧ください。
どういう制度か
根拠は不動産登記規則にあります。
不動産登記規則 第247条第1項(法定相続情報一覧図・抜粋)
表題部所有者、登記名義人又はその他の者について相続が開始した場合において、当該相続に起因する登記その他の手続のために必要があるときは、その相続人(中略)は、被相続人の本籍地若しくは最後の住所地、申出人の住所地又は被相続人を表題部所有者若しくは所有権の登記名義人とする不動産の所在地を管轄する登記所の登記官に対し、法定相続情報(次の各号に掲げる情報をいう。以下同じ。)を記載した書面(以下「法定相続情報一覧図」という。)の保管及び法定相続情報一覧図の写しの交付の申出をすることができる。
一 被相続人の氏名、生年月日、最後の住所及び死亡の年月日
二 相続開始の時における同順位の相続人の氏名、生年月日及び被相続人との続柄
読みどころが2つあります。
① 申出先を4つから選べます
条文が挙げているのは、被相続人の本籍地/被相続人の最後の住所地/申出人の住所地/不動産の所在地を管轄する登記所です。
ご自身の住所地の法務局でよいという点が使いやすいところです。本籍地が遠方でも、近くの法務局で申し出られます。
② 載るのは「同順位の相続人」だけです
条文は「相続開始の時における同順位の相続人」としています。相続人が誰かを示す制度であって、誰が何を取得したかを示す制度ではありません。 ここは後で触れます。
何に使えるか
交付される写しには、登記官の認証文が付きます。戸籍一式を確認したうえで作られたものなので、戸籍の束の代わりとして扱われます。
- 相続登記の添付書面
- 金融機関での預貯金の解約・名義変更
- 証券会社での株式の手続き
- 相続税の申告
同時に複数の手続きを進められるのが大きな利点です。戸籍の束が1つしかないと、A銀行に出しているあいだB銀行は動かせません。一覧図を必要な通数もらっておけば、並行して進められます。
金融機関によって受け取り方に違いが出ることもありますので、戸籍の原本も手元に残しておくと安心です。
申し出るときにそろえるもの
規則247条3項が、添付する書面を列挙しています。法務局が公開しているチェックリストの書き方に沿って整理すると、次のとおりです。
| 書面 | 補足 |
|---|---|
| 法定相続情報一覧図(自分で作る) | 作成年月日を書き、申出人が記名します |
| 被相続人の出生から亡くなるまでの戸除籍謄本 | 連続した戸籍謄本・除籍謄本。代襲相続や、兄弟姉妹が相続人になる場合は、被代襲者や被相続人の親の戸除籍謄本も要ります |
| 被相続人の住民票の除票 | 廃棄などで取得できない場合は、被相続人の戸籍の附票 |
| 相続人全員の戸籍謄本・抄本 | 被相続人が亡くなった日以後に取ったもの |
| 申出人の氏名・住所を確認できる公的書類 | 運転免許証の表裏両面のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票記載事項証明書など。コピーには原本と相違がない旨を書き、記名します |
| 代理人が手続きする場合は、委任状 | 親族が代理するときは親族関係が分かる戸籍謄本、司法書士などの資格者代理人は所定の身分証明書の写しも添えます |
結局のところ、集めるべき戸籍は相続登記と同じです。 一覧図を作るために新たに何かを集める必要はありません。戸籍がそろった時点で、そのまま申し出られます。
なお、提出した戸籍は返してもらえます(同条6項)。一覧図をもらったうえで戸籍の原本も戻ってきますので、出したきりになることはありません。
一覧図に住所を書くかどうか
ここは判断が要るところです。
規則247条4項は、一覧図に相続人の住所を書いたときは、その住所を証する書面(住民票)も添付しなければならないとしています。
裏を返すと、住所を書かなければ住民票は要りません。
| 住所を書く | 住所を書かない | |
|---|---|---|
| 添付書類 | 相続人全員の住民票が要る | 要らない |
| 使い勝手 | 金融機関などで住所の確認まで済むことがある | 別に住民票を求められることがある |
なお、住所を証する書面は住民票の写しに限りません。法務局のチェックリストには、各相続人の印鑑証明書や戸籍の附票でも代用できますと明記されています。
相続人が多い場合、全員分の住民票を集めるのは手間です。一方で、住所が入っていたほうが後の手続きが早いこともあります。どちらが楽かは事案によります。
一覧図の様式と記載例は法務局が公開していますので、当てはまるものを選んで写していくのが早道です。
この制度で示せないこと
便利な制度ですが、できないことをはっきりさせておいたほうが安全です。
① 誰が何を取得したかは載りません
一覧図が示すのは、相続人が誰かというところまでです。遺産分割の内容は載りません。相続登記では、一覧図とは別に遺産分割協議書が要ります。
② 相続放棄は反映されません
相続放棄をしても、戸籍にその旨が記載されるわけではありません。一覧図は戸籍から作られますので、放棄した方も相続人として載ります。
放棄があったことを示すには、家庭裁判所の書面を別に添えることになります。相続登記では、放棄をした方に届く相続放棄申述受理通知書で差し支えないとされています。金融機関では受理証明書を求められることがあります。
③ 遺言があっても、その内容は載りません
遺言による相続登記では、一覧図に加えて遺言書そのものが要ります。
④ 数次相続は、1枚にまとまりません
相続が重なっている場合、一次相続ごとに作ることになります。1枚ですべてを表そうとしても収まりません。
⑤ 日本国籍でない方が含まれる場合は使えません
戸籍がないため、この制度の対象外です。
再交付は5年以内に
一覧図は法務局で保管され、後から追加の写しを求めることができます(規則247条7項)。ただし保管には期限があります。
不動産登記規則 第28条の2第6号
法定相続情報一覧図つづり込み帳 作成の年の翌年から五年間
5年です。この期間内であれば、戸籍を集め直さずに再交付を受けられます。
再交付を求められるのは、最初に申し出た方に限られます。 他の相続人が必要になったときのために、申し出るときに多めにもらっておくほうが確実です。手数料はかかりませんので、遠慮なく通数を書いてください。
申出書には写しの利用目的を書く欄があり、写しは被相続人の死亡に起因する相続の手続き(年金の手続きを含む)にだけ使うものとされています。その範囲であれば、通数の上限は定められていません。
いつ作るのが良いか
戸籍を集め終わったタイミングです。
一つ注意があります。申出をしたその場で写しが交付されるわけではありません。 登記官が戸籍の内容を確認したうえでの交付になりますので、提出先での予定には日数の余裕を見てください。
相続の手続きは、不動産、預貯金、証券、年金と枝分かれしていきます。その分岐点に立ったときに一覧図があると、そこから先を同時に進められます。
逆に、不動産だけで手続きが終わるのであれば、無理に作る必要はありません。戸籍をそのまま出せば済みます。
制度の案内、申出書の様式と記入例、一覧図の様式は、法務局の「法定相続情報証明制度」の案内ページにまとまっています。ご自分で申し出る方は、まずここを見てください。
当事務所にご依頼いただく場合は、戸籍の収集から一覧図の作成・申出まで含めてお引き受けします。ご自分で集めた戸籍がある場合も、その続きからで構いません。
相続登記について詳しく/預貯金等の相続もあわせてご覧ください。費用は料金のご案内に載せています。
根拠・参考
- 不動産登記規則(e-Gov法令検索)
- 法務局「「法定相続情報証明制度」について」
- 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」
- 法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」
- 法務局「必ず用意する書類/必要となる場合がある書類(チェックリスト)」
条文は e-Gov 法令検索で現行のものを確認しています(最終確認 2026年7月29日)。