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相続登記は義務化されました。過去に亡くなられた方の相続分も、原則として2027年3月31日までに申請が必要です。

不動産の「所在」と住所はなぜ違うのか|地番・家屋番号・住居表示の成り立ち

遺産分割協議書を作るときや、登記の申請書を書くとき、「住所ではなく、所在と地番で書いてください」と言われます。

ご自宅の場所は一つなのに、指し示す言い方が2つある。 ふだんは意識しませんが、手続きの場面で急に顔を出します。

なぜこんなことになっているのか。答えは、この2つがまったく別の目的で作られたところにあります。順に見ていきます。

相続登記の流れは相続登記とはをご覧ください。

登記の番号は、登記所が付けます

まず登記のほうから。番号を付けるのは登記所(法務局)です。

不動産登記法 第35条(地番)

登記所は、法務省令で定めるところにより、地番を付すべき区域(中略)を定め、一筆の土地ごとに地番を付さなければならない。

不動産登記法 第45条(家屋番号)

登記所は、法務省令で定めるところにより、一個の建物ごとに家屋番号を付さなければならない。

「一筆の土地ごとに」「一個の建物ごとに」 という書き方に、この番号の性格が出ています。

土地は、目に見える境目があるとは限りません。地面は連続しています。そこを登記上の区画として区切った単位が「一筆」(いっぴつ)です。その一筆ごとに番号を振る。それが地番です。

条文はその前段で、まず「地番を付すべき区域」を定めるとしています。この区域にあたるのが、登記事項証明書の表題部にある「所在」です(「名古屋市中川区戸田二丁目」のような表示です)。地番は、その区域の中で一筆ごとに振られる番号ですから、「402番」だけでは、どの町の402番か決まりません。土地は、所在と地番の組み合わせで一つに特定されます。

建物も同じ組み立てです。所在と家屋番号の組み合わせで特定します。

何のためかというと、不動産登記法は冒頭でこう述べています。

不動産登記法 第1条(目的・抜粋)

この法律は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより、国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。

権利の対象を特定するための番号だということです。「この土地は誰のものか」「どこからどこまでが対象か」を示すために振られています。

土地は、分けたり合わせたりできます

ここが後の話につながります。

一筆の土地は、分筆して2つ以上にできますし、隣り合う土地を合筆して1つにもできます。土地の一部だけを売るときや、相続した土地を分け合うときなど、必要が生じた折に行われ、区画は少しずつ変わっていきます。

分筆すると、番号は枝分かれします。たとえば「402番」を2つに分けると、「402番1」「402番2」のような枝番が付けられます。そのまた一部を分ければ「402番3」が生まれる、というように、新しい番号は空いている数字を使って付けられていきます。

その結果どうなるか。番号の並びが、歩いたときの並びと一致しなくなります。 402番1の隣が402番7で、その隣が402番3、ということが起こります。

住所は、その人の生活の本拠です

一方の住所は、土地の区画の話ではありません。

民法 第22条(住所)

各人の生活の本拠をその者の住所とする。

人がどこで暮らしているか、という概念です。土地に付いているものではなく、人に付いています。

そして、その住所をどう表示するかについて、別の法律が置かれています。

住居表示は、街の並びに沿った番号です

住居表示に関する法律 第2条(住居表示の原則・抜粋)

市街地にある住所若しくは居所又は事務所、事業所その他これらに類する施設の所在する場所(以下「住居」という。)を表示するには、(中略)次の各号のいずれかの方法によるものとする。

 一 街区方式 市町村内の町又は字の名称並びに(中略)道路、鉄道若しくは軌道の線路その他の恒久的な施設又は河川、水路等によつて区画した場合におけるその区画された地域(以下「街区」という。)につけられる符号(中略)及び当該街区内にある建物その他の工作物につけられる住居表示のための番号(中略)を用いて表示する方法をいう。

 二 道路方式 市町村内の道路の名称及び(中略)住居番号を用いて表示する方法をいう。

読み比べていただくと、対象が違うことが分かります。

地番は「土地」に付き、住居表示は「住居」に付きます。 条文が「住居」と定義しているのは、人や事務所がある場所です。そして番号を付ける相手は「建物その他の工作物」であって、土地ではありません。

区画のしかたも違います。街区方式は、道路・鉄道・河川といった目に見えるもので囲まれた区画を街区とします。歩いていて分かる境目で区切るわけです。

誰が決めるか

住居表示に関する法律 第3条第1項(実施手続)

市町村は、前条に規定する方法による住居表示の実施のため、議会の議決を経て市街地につき、区域を定め、当該区域における住居表示の方法を定めなければならない。

決めるのは市町村で、しかも議会の議決を経ます。登記所が全国一律の手続きで付ける地番とは、成り立ちからして違います。

さらに 「市街地につき」 と限定されています。全域に実施されるものではありません。

なぜ、2つに分かれたのか

ここまでを並べると、こうなります。

地番・家屋番号住居表示
付けるのは登記所(法務局)市町村(議会の議決を経る)
付ける相手一筆の土地/一個の建物建物その他の工作物
区画のしかた登記上の区画道路・河川などで囲まれた街区
何のため権利の対象を特定する住居を分かりやすく表示する
及ぶ範囲全国市街地のうち、実施した区域

目的が違うので、別の番号になっている。 これが答えです。

もともとは、地番がそのまま住所としても使われていました。土地の番号が、そこに住む人の居場所も兼ねていたわけです。

しかし先に述べたとおり、土地の番号は権利の都合で動きます。 分筆すれば枝番が増え、並びは崩れる。番号が飛んでいれば、郵便も、訪ねてくる人も迷います。

総務省は住居表示制度について、「街区内の地番による住所表示に代わって、街区符号と街区内の番号による合理的な住居表示制度を確立すること」を目指すものだと説明しています。地番による住所表示を、置き換えるための制度だったということです。

住居表示に関する法律が制定されたのは昭和37年(1962年)です。

一つの番号に、権利の特定と道案内の両方をさせるのをやめた。 そう捉えると、2つある理由が腑に落ちるのではないかと思います。

見分け方

書類に書かれた住所がどちらの方式かは、末尾で見当がつきます。

  • 「○番○号」 … 「号」が付いていれば、住居表示による住所です
  • 「○番地」「○番地○」「○番地の○」 … 地番をもとにした住所です。住居表示が実施されていない地域の書き方です

気をつけたいのは、「402番地の2」のような住所も、地番そのものではないことです。地番を借りて住所を表した書き方で、登記の記録では所在「名古屋市中川区戸田二丁目」・地番「402番2」に分かれます。住所の「番地」と登記の「番」は、同じ土地に由来していても別の書き方です。

登記事項証明書の表題部を見れば確実です。土地なら所在・地番、建物なら所在・家屋番号が書かれています。登記に使うのは、そこに書かれているとおりの表記です。

住居表示が実施されていない地域では、地番をもとに住所を表します

住居表示に関する法律3条1項が「市街地につき」としているとおり、この制度はすべての場所で行われているわけではありません。市町村が区域を定めて実施するものなので、同じ市の中でも実施区域と未実施区域が混在します。

実施されていない地域では、地番をもとにした「○番地○」「○番地の○」といった形で住所を表します。当事務所の住所「名古屋市中川区戸田二丁目402番地の2」も、その一つです。

「地番と住所は違う」と聞いて混乱される方がいますが、正確には、住居表示の実施区域では住所と地番が別々の番号になり、未実施区域では住所の数字と地番の数字が重なります。数字が重なっていても、住所は生活の本拠の表示、所在・地番は土地を特定するための表記で、役割は別のままです。ご自宅がどちらなのかは、住民票の表記を見れば分かります。

相続の手続きでは、ここが効いてきます

協議書も申請書も、登記の表記で書きます

遺産分割協議書に不動産を書くときも、登記の申請書を書くときも、登記事項証明書のとおりに写します。 住居表示で書いた協議書は、どの不動産を指すのか特定できません。

詳しくは遺産分割協議書の書き方をご覧ください。

地番が分からないときの調べ方

① 権利証(登記識別情報通知)を見る 取得したときの書類に書かれています。

② 固定資産税の納税通知書を見る 課税明細に地番が載っています。私道など非課税の土地は載らないことがありますので、名寄帳とあわせて確認してください。

③ 管轄の法務局に尋ねる 法務局は「地番・家屋番号の照会」を電話での問い合わせ項目として案内しています。住所を伝えると、地番を調べてもらえる場合があります。

④ 地番検索サービスを使う 法務省が、登記情報提供サービスの利用者向けに、住居表示からおおよその地番を無料で検索できる仕組みを用意しています。住宅地図の上で探す形です。提供エリアは順次拡大しているとのことですので、対象かどうかは確認が要ります。

登記簿の住所が、いまの住所とつながらないことがあります

相続登記では、登記簿に記録されている名義人の住所と、住民票の除票に書かれた最後の住所をつないで、同一人物であることを示します。

このとき、住居表示の実施によって住所の表記が変わっているのに、登記の住所を直していないことがあります。何十年も名義がそのままの不動産では、起こりうることです。

その場合、市区町村に住居表示が実施されたことの証明を出してもらい、つながりを示すことになります。名称や取り扱いは市区町村によって違いますので、窓口でお尋ねください。

手をつける前に

まず、ご自宅の登記事項証明書を取ってみてください。 表題部に書かれた所在と地番(建物なら所在と家屋番号)が、登記でその不動産を指し示す表記です。

固定資産税の納税通知書があれば、そこから取り寄せられます。手元の住所と表記が違っていても、間違いではありません。 目的の違う2つの番号が、同じ場所を指しているだけです。

相続の手続きでどの表記を使うのか、名義人の住所がつながるかどうか。ご相談の場で、書類を拝見しながら整理してお伝えします。

相続登記について詳しく対応地域ごとに、申請先となる法務局もご案内しています。

相続登記の手続きとご依頼について →

根拠・参考

条文は e-Gov 法令検索で現行のものを確認しています(最終確認 2026年7月29日)。

代表司法書士 宮城 竜哉
この記事を書いた人 司法書士 宮城 竜哉(愛知県司法書士会所属 登録番号 愛知県第1842号)

平成25年の開業から13年、累計1,000件以上の相続手続きの依頼を受けてきました。

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